皮膚腫瘍について

皮膚がんについて

皮膚がんは増加の一途をたどっていて,1975年の年間2000例から2008年にはその7倍の14000例となっています.それに伴い,皮膚がんにより亡くなる方も1975年の700例から2011年には倍の1400例に増加しています.今後も増え続け,2030年には現在の1.5倍に達すると推計されています.

当院では,皮膚腫瘍に対応できる体制を整えるために,20年前から皮膚外科治療で有名な虎の門病院と国立がんセンター(現国立がん研究センター)に人材を定期的に派遣し,これまでに10名の皮膚外科医を養成して筑波大学皮膚科の皮膚外科チームのレベルアップを計ってきました.虎の門病院卒業組は外科治療を中心としたがん治療の技術を,国立がんセンター卒業組は抗癌剤治療や放射線治療を含む包括的ながん治療についての技術を持ち帰りました.筑波大学ではこれら異なる二つの施設で行われている最先端のがん治療をうまく融合することで全国でもトップクラスの治療技術を備えており,臨床研究の分野でも積極的に発表をしております.

2013年度手術実績

  • 基底細胞癌:38例
  • 有棘細胞癌:36例
  • 悪性黒色腫:16例
  • 乳房外パジェット病:13例
  • 肉腫:6例
  • うち,センチネルリンパ節生検施行:28例
  • うち,リンパ節郭清術を施行:5例

皮膚がんチェックリスト

膚がんも他のがんと同様に早期発見により助かることがほとんどです.しかし,初期症状はがんの種類により大きく違うため,一概にこれ,という症状がありません.しかしいくつかのチェック項目がありますので,以下のような症状がある方はお近くの皮膚科に御相談ください.必要があると判断されれば大学病院受診へ紹介されるようになっております.

ご自身で直接大学病院の予約を取ることも可能ですが,別途5250円の費用が算定されます.

ポイントは,今までに無かったものができると言うこと,そしてそれがだんだん大きくなることです.生まれつきあるものは基本的に余り問題となりませんが,急に大きくなるなど変化が出た場合は要注意です.また,痛いや痒いなどの臨床症状もほとんど無いのが皮膚がんの特徴とも言えます.

1)顔面にできやすい皮膚がん

(ア) 今までに無かったほくろのような黒い出来物が出来た
右の写真は基底細胞癌という皮膚がんですが,一般の方がこれをほくろと区別するのは難しいのではないでしょうか.

(ウ) 徐々に大きくなるおできが出来たが痛くない.
右の下まぶたに出来たおできの様な出来物.これも有棘細胞癌という皮膚がんです.

(エ) 中々治らない赤い斑点が鼻の頭に出来た.
これは基底細胞がんです.我々はこの見た目で基底細胞がんとほぼ確実に診断できます.

2)別名ほくろのがんとも呼ばれる皮膚がん

(ア) 右のほおに出来たちょっと大きめのシミ.他にもシミはたくさんあるが,ちょっと色が濃い.
これは悪性黒色腫と呼ばれる皮膚がんで,進行すると全身に転移を起こして死に至る非常に悪性度の高い皮膚がんです.早期発見が大事です.

(イ) おなかに黒い出来物が出来た.だんだん大きくなっている.
これも悪性黒色腫です.大きさは2cmくらいですが,既にリンパ節への転移がありました.適切な治療が行われ,現在も元気に仕事をしておられます.

(ウ) 足の裏にたわしでこすっても取れない黒いシミが出来た.
これも悪性黒色腫です.日本人は手と足に出来やすいです.

(エ) 爪の色がだんだん茶色く変色してきた.
これも悪性黒色腫です.爪が黒いという方はたくさんいらっしゃいますが,悪性を疑うポイントは,徐々に色調が濃くなり,黒い部分が広がっていくことと,甘皮の部分など爪以外の部分に色が広がることです.

(オ) 進行するとこのように爪が破壊されてきます.
ここまで来ると比較的病気としては進行していることが多いです.

色調が変わっているくらいであれば,早期の悪性黒色腫である可能性が高いです. 悪性黒色腫も早期の段階で発見できれば治癒率は95%以上です.おかしいと思ったらすぐに皮膚科に御相談ください.白人ではこの悪性黒色腫は非常に頻度が多いため,悪性黒色腫に対する知識を持っています.一方で,日本では余り知られていないため,残念ながら日本ではアメリカやヨーロッパと比べて比較的進行した状態で発見される患者さんが多いのが現状です.

御紹介したとおり,進行した状態であれば誰もがこれはおかしいと分かりますが,いかに早期の段階で発見して治療が出来るかが我々皮膚がんを扱っている人間の腕の見せ所です.早期発見・早期治療に勝る治療法はありません.とにかく気になるものがあればすぐに御相談ください.

皮膚腫瘍チーム :藤澤 康弘, 中村 貴之, 田中 亮多